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仕事の達人

第   
4
   回

生命保険業界の改革者は
ロジカルな楽観主義者


※転職情報誌type2008年8月号より転載

ライフネット生命保険株式会社 代表取締役社長 出口治明 氏

ライフネット生命保険株式会社

代表取締役社長
出口治明氏

1948年、三重県生まれ。1972年に京都大学法学部を卒業し、日本生命に入社。企画部、財務企画部にて経営企画に従事した後、1988年に生命保険協会・財務企画専門委員長に就任。金融制度改革や保険業法改正のために尽力する。その後、ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、同社を退職。 2006年10月、インターネット経由で保険商品を販売する“ネット生保”設立のため、ネットライフ企画を設立。2008年4月、保険業免許取得に伴いライフネット生命保険に商号変更。同年5月より営業開始。著書に『生命保険入門』(岩波書店刊)がある


2008年5月、生命保険業界に変化の波が訪れた。従来の常識を覆す新業態“ネット生保”が、立て続けに開業したのだ。そのうちの1社、ライフネット生命保険を設立したのは、生保業界で30年以上の経験を持つ出口治明氏。大規模な保険業法の改革にも携わった人物として知られる彼だが、その人柄は驚くほど柔和だ。この「自然体の改革者」の胸の内に迫った。

「僕の考える素晴らしい人生とは、川の流れのままに生きていくこと。逆につまらないのは、先に人生の目標を立ててしまい、そこから逆算してキャリアを築こうとする人生じゃないでしょうか」

保険商品をインターネット上で販売する“ネット生保”を立ち上げるべく、2006年にライフネット生命保険を設立した出口治明氏。取材を進めてくうちに、ふとこんな言葉が飛び出した。

ナポレオンだって、フランス革命がなければ英雄にはなれなかった――。つまり、人の人生は時の流れが決めるもの。そう言って笑う出口氏は、生命保険業界に入って34年。業界トップ企業である日本生命で長年経営企画に携わり、その後、ロンドン現地法人の社長や国際事業部長などを歴任。 1980年代後半から始まった金融制度改革にも参画し、保険業法改正にも尽力した保険業界の生き字引だ。

キャリアを見ても、出世街道をひた走ってきたエリートである。にもかかわらず、出口氏は大物然とした威圧感を相手に与えることもなく、自身のことを語る様子もどこか飄々としている。

そもそも、日本生命に就職した時のエピソードも、「川の流れのままに」という人生観を体現するようなものだった。

司法試験に落ちたことが生保業界に入ったきっかけ

出口氏が京都大学を卒業し、社会人になったのは1972年。当時は70年安保闘争の真っ只中で、学生たちの間では「真面目に卒業して就職するなんてバカバカしい」という考え方が一般的だった。

「ただ、僕は実家が貧しかったので、何年も大学に居座るわけにいかなかった。だから、司法試験を受けて弁護士になろうと思ったんです。それまで試験に落ちたことがなかったから合格することしか考えていなかったし、会社に就職するつもりはなかったんですよ」

そんな時、たまたま友人と遊びに行った大阪・淀屋橋で、京阪電車の駅の真上にある日本生命の本社を目にする。その友人の「ここも京大生を結構採用しているらしいよ」という一言を聞き、2人でふらりと立ち寄ってみたのが、この会社との縁の始まりだった。対応してくれた年配の社員は、長髪にセーターというラフな格好で突然訪問してきた出口氏らを追い返しもせず、真摯に話を聞きながらこう言ったという。「もし弁護士になる予定が変わったら、うちに来てくださいよ」。

「その時は『なんや、就職って簡単なもんやなぁ』なんて友人と話していたんですが、その後見事に司法試験に落ちまして(苦笑)。他に当てもないので、日本生命に入ったんです。文系サラリーマンの仕事なんて、どの会社でも大差ないと思っていましたから、入社を迷うこともありませんでした」

こうして、「流れのままに」スタートした社会人生活。だが、仕事は楽しかった。というより、出口氏自身が楽しくしていたと表現した方が正しいだろう。

「もともとeasy goingな人間なんです。一日の大半を会社で過ごすのだから、楽しくしなくては損だなと。新聞に載るような大きな仕事を“楽しい”と考える人もいるでしょうが、僕はコピー一枚取るのだって楽しかったですよ(※当時の「青焼きコピー」は印刷時間によって仕上がり具合が変わっていた)。『このコピーは誰が見るもので、どんな役割を果たすのか』、『この作業に上司は何を望んでいるのか』なんて考えながら取っていましたから。僕が状況を察してベストな時間と仕上がりでコピーを提出できれば、それなりに達成感があるし、楽しい仕事になる。だから、社会人になってから今に至るまで、楽しくなかった日は一度もないんですよ。これは僕の唯一の自慢なんです」

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